グラフィックデザイン・アーカイブについて
本事業では、3ヵ年にわたって国内外のグラフィックデザイン所蔵機関に赴いて聞き取り調査をおこなってきました。一方で、グラフィックデザインの有識者で構成した協力委員会の先生方のご協力のもとで、アーカイブ構築を目指してモデル作成にも着手をしました。そして、その過程で、国内各所蔵機関が個別に作成をしている作品台帳およびそれにもとづいたデータベースと、本プロジェクトで想定しているアーカイブとが、かならずしも合致するものでないことを確認することができました。個別作品を出発点とするデータベース概念に対して、アーカイブ理論は資料体(群)を括ることからはじまる作業です。このような現状を踏まえつつ、なおかつ、アーカイブ構築を目指すとすれば、各所蔵機関をひとつの資料体(群)と仮定して作業を進めることも必要になると予想されます。
グラフィックデザイン・アーカイブに関するポイント
グラフィックデザイン・アーカイブの構築に際して、美術品とは異なるデザイン製品としての特徴が明らかになりました。以下にアーカイブ構築を想定したときに起こりうるポイントをあげました。これらは、作品データの項目設定に結びつき、継続的な検討が必要な課題でもあります。
- 制作が分業制(アートディレクター、イラストレーター、カメラマンなど)であり、作者名を確定しにくい
- 作品の「名づけ」が難しい
- クライアントが判然としない場合がある
- 版を一部変えた後刷りが存在する
- 印刷物であるためのオリジナルと複製の問題
- 記載文字転写の必要性
- 著作権の在り処
- 被写体の肖像権